現在の高速インターネット通信を普及させた光ファイバー網。電力会社の光ファイバー網は山の頂などに立っている高圧鉄塔の一番上の電線に敷設されています。光ファイバーはガラスが原料で脆いため、電線のたわみでも折れることが無いようにアルミ製の芯となる線を入れて保護しています。その線が、当社の製品であるアルミスペーサーです。
アルミスペーサーの断面を見てみると、光ファイバーを通すための溝があり、まるで花びらのような形になっています。
アルミスペーサーの製造に携わるまではダイスを使ったステンレスの伸線以外の加工の経験の少なかった当社では、開発に当たりまず異形ダイスでの伸線にトライしました。ところが異形ダイスの伸線では断面形状が花びら状になりませんでした。また、表面に疵が入ってしまい商品として使えないものでした。複数回ダイス伸線をして、徐々に製品形状に近づけるようにしても形状が出ませんでした。
そこで異形ダイスによる伸線ではなく、カセットローラーによる圧延で丸線に溝を掘ることで形状を出すことに成功しました。量産が進む中で寸法精度が厳しくなり、10,000m以上連続していなければならないという長尺化の要望が出てきました。既製のカセットローラーでは1,000m製造するとメンテナンスしなければならず、10,000m機械を止めることなく製造するという長尺化に応えることができませんでした。
そこで自社でカセットローラーを開発し、長尺化および寸法精度の改善に成功しました。その後、線に一定のピッチでの捻りが必要との要望が入り、機械を改造しました。疵、線径公差、ピッチを全長保障できるよう、検査器具も特注し厳しい品質要求に製造環境を整えることが出来ました。
開発当初は4溝まででしたが、改良を重ね現在では8溝まで製造が可能となっています。
日本の高速インターネット社会を支えるアルミスペーサーの技術開発は、その後フェルールフランジ用異形線やワイパーバーティブラ等、当社の製品を作り出していくための礎となっています。
自動車に乗っているとき、雨が降ってくると動かすものは何でしょうか。そうです、ワイパーです。ワイパーはガラス面を綺麗に払拭するワイパーブレードとそれを支えるワイパーアーム、ワイパーアームを動作させるワイパーモーター、ワイパーモーターとワイパーアームとを結ぶワイパーリンクとで構成されています。ワイパーブレードにはガラス面に接するラバーを支える金属線が組み込まれています。
この金属線こそ、当社の技術開発の一つの集大成とも呼べるバーティブラです。
自動車部品は非常に製品の基準が厳しく、高い精度を持っていなければなりません。アルミスペーサーの開発等で圧延技術を培っていたものの、本開発で最も難しい点は「まっすぐな線を作る」事でした。
バーティブラは伸線した丸線を圧延して平線を作り、平線を切断して作ります。バーティブラはガラスの曲面に応じた曲線形状をしていなければなりませんので切断する際に曲線形状に加工します。ところが圧延する際に線が蛇行してしまい、切断に際しロスが多く出るという問題が発生しました。線の蛇行を抑える為、伸線機、圧延機に工夫を加え、さらにそれぞれの工程の最適条件を選定することによりまっすぐな線を作ることが出来るようになりました。
現在では当社の作るバーティブラは国内メーカー向けで高いシェアを誇っております。
フェルールフランジは光ファイバーケーブル同士を接続するアダプター部品です。以前は部品製造メーカーが丸線を切削して製造していましたが溝部分の切削に時間とコストがかかっていました。アルミスペーサーで培った技術を使い当社が溝のついた異形線を開発しました。当社の異形線を使用することで溝部分の切削が省略され部品製造メーカーでの製造工程の大幅な簡略化及びコストの削減につながったのです。
フェルールフランジ用の異形線の開発は、アルミスペーサーの製造技術をベースとしました。ところが、アルミスペーサーの製造設備で作った試作品は、寸法精度が満たされずに失敗ばかり。そこで圧延で製品形状まで製造し、仕上げとしてダイスで引き抜いて伸線する方法をとり、寸法精度を満たすことが出来ました。また、直線に切断する際に金属の捻りが生じてしまう問題も機械を開発し、捻りの無い直線カットを実現する事に成功し、さらには量産化までも実現しました。
IT景気に乗って順調に注文の量も増え、既存の設備では対応出来ないため設備を購入したのですが、設備を導入した直後に突如注文がキャンセルされてしまったのです。予期せぬことでしたがITバブルが崩壊したのです。製造中の中間品は他に転用することも出来ずスクラップと化してしまいました。設備もフェルールフランジ専用であるため一度も動かすことなく遊休設備となってしまいました。
しかしこれに懲りることなく当社は技術を磨き、お客様のニーズに応えるよう努力を続けております。